Sweetopia合同会社 代表 大沼 史枝さん
PROFILE
ソフトバンクにて6年間勤務。その後、360年の歴史を持つ和菓子屋の新ブランド立ち上げを機にカフェ運営に携わり、日本酒サブスクリプションブランドやコスメブランドのディレクターを務めるなど、食とライフスタイル分野で幅広くプロデュースや企画に携わる。
また、インフルエンサーとしても活動し、ハーブティーソムリエとしてのラジオ出演や、海外展示会にも出展するなど、和食器の広報も経験。自身の経験と感性を活かし、2024年にSweetopia合同会社を設立。現在は、昭和記念公園近くでpimiri cafeを運営し、”推し活”に特化した空間を提供。韓国風の世界観とフォトジェニックなスイーツを通じて、訪れる人が”推し”と最高の時間を過ごせるカフェを展開。推しとの特別なひとときを彩る場として、ファンの心を満たす体験を届けている。
趣味から始まる起業、SNS時代の経営術
推し活経験が生んだ居心地のいいカフェ作り
まずは、現在のお仕事について教えてください。
Sweetopia合同会社の代表として、立川で韓国風カフェ『ピミリカフェ』を経営しています。元々はインフルエンサーとして活動していましたが、今はカフェの経営がメインの仕事です。昨年9月に既存店をM&Aで引き継いだ形でスタートしました。
「Sweetopia」という社名には何か意味があるのでしょうか?
この社名には “Sweet(甘い・幸せ)” と “Utopia(理想郷)” を掛け合わせて、訪れる人が幸せを感じられる空間を作りたいという想いを込めています。カフェだけでなく、将来的には様々な形で人を幸せにできる事業を展開していきたいと考えているんです。
大企業からインフルエンサー、カフェオーナーへ、そのキャリアの転機は?
大学卒業後、ソフトバンクの法人営業部で6年間働いていました。でも本当は写真を撮ったり文章を書いたりする広報的な仕事がしたくて。部署移動が叶わなかったので、自分の好きなことを発信する場としてインスタグラムを始めたんです。
フォロワーが2~3万人に増えたタイミングで、360年の歴史を持つ和菓子屋さんが新ブランドを立ち上げる際、そのプロジェクトに関わるためにソフトバンクを退社しました。店舗マネージャーや広報を担当して、テレビ出演の機会もいただいて。そこから『いつか自分のお店を持ちたい』という夢が芽生えたんです。
その後、日本酒のサブスクブランドのディレクターやコスメのディレクターなど、様々な経験を積んで、ついに自分のカフェを持つことになりました。

カフェのコンセプトを決める際に大切にしたことは?
このお店を『推し活の聖地』にしたいというのが、最初から決めていたことでした。私自身、15年ほど韓国のアイドルグループSHINeeを推していて、推し活をする時の気持ちがよくわかるんです。
私にとって、推し活はただの趣味ではなく、人生の一部です。SHINeeの曲を聴くと『この時、自分はこんなだったな』とか『この曲に励まされたな』と、その時々の自分の気持ちが蘇るんです。少し大げさに聞こえるかもしれませんが、推し活って人生とリンクしているもの。だからこそ、推し活を楽しむお客様が、ただ過ごすだけでなく、ここでの時間が『人生の一部』になるような空間を作りたいと考えています。
推し活は『色』が全てなので、ほぼ全てのメニューで好きな色にリボンやトッピングを変えられるようにしました。それから、私が推し活をしていた頃は『オタク』と呼ばれる時代で、今のように開かれた世界ではなかったです。だからこそ、お客様が自分の世界に浸れる居心地の良い空間を作りたかったんです。
開店後、どのような変化がありましたか?
最も大きな変化はリピーターが増えたことです。一般的な『映えカフェ』は一度行って写真を撮ったら満足という方が多いのですが、うちのお店は推し活をする場所として認知されたおかげで、月に1~2回来てくださるお客様が増えました。一時的に話題になっても、継続的な経営は難しい。だからこそ、私は『定期的に通いたくなるお店』を作ることが、長期的なビジネス成功につながると考えました。
推し活に加えて、もう一つの軸はワンちゃん連れのお客様です。店内でワンちゃんと一緒に過ごせるカフェって意外と少ないんですよ。寒い冬にもペットと一緒に暖かい店内で過ごせるのは、愛犬家の方にとって嬉しいポイントになっています。

インフルエンサー時代と比べて、カフェを経営するようになって変わったことはありますか?
SNSをしていると、もちろん嬉しいことも多いですが、その一方で、孤独を感じたり、思わぬ誤解が生まれることもあります。インフルエンサーとして活動していた頃は、意外と『ひとり』の時間が多く、誰かとリアルに会って話す機会が限られていました。
だからこそ、今、お客様とリアルでお会いして会話をしたり、DMでのやり取りをする時間が本当に幸せだなと感じます。オンラインだけでは伝えきれない『温度』があるので、お店を通じて直接つながれることに大きな意味を感じています。
今後の展望について教えてください。
まずは2~3店舗まで展開したいですが、その先はカフェだけではなく、教育の分野にも進出したいと考えています。料理やお菓子を作る技術を持っていても、それをSNSで発信する方法を知らないと、今の時代はなかなかお店がうまくいかない。SNS発信と作る技術、両方を育てるスクールをいつか開きたいんです。
そもそも『Sweetopia合同会社』という社名には、『訪れた人が幸せになれる場所を作る』という想いが込められています。それはカフェだけに限らず、SNS発信を通じて自分の夢を叶えたい人や、技術を活かして活躍したい人を支援する場にもつながるはずです。
カフェで一緒に働きたいと言ってくれる若い子たちも、『インフルエンサーがオーナーのカフェで働きたい』と思ってくれています。そういう需要があるのを日々感じているので、教育分野には大きな可能性を感じています。

インフルエンサーの経験は、カフェ経営にどう活きていますか?
自分がインフルエンサーかつ推し活をしていた経験から、どういうものがあったらお客様が嬉しいかがよくわかります。撮影用の小道具を店内に置いて、お客様が撮影を楽しめる場所として作り上げています。
また、推し活をしているときに、時間を気にさせられたり『次のお客様がいらっしゃるので』と言われると焦ってしまった経験があります。だからこそ、時間制限を設けないようにしています。居心地の良さを大切にしているんです。
仕事とプライベートの境界線は?
ソフトバンクで働いていた頃は息抜きでインスタをやっていましたが、今は好きなことをそのまま仕事にしているような感じです。特にオンとオフの境界線はなく、常にカフェのことや、どんな発信をしたらバズるかを考えています。今の時代はSNSが上手くないと事業が難しいと実感しています。インスタを見て来店してくださるお客様が本当に多いので、飲食店×SNSの可能性は日々感じています。
これからカフェやお店を始めたい人へのアドバイスをお願いします。
自分の好きなことや得意なことをベースにすることが一番大切だと思います。私は推し活の経験があるからこそ、お客様の気持ちがわかります。“好き”を信じて一歩を踏み出すことが、きっと未来の可能性を広げてくれるはずです。

