15年のキャリアを経て見つけた、本当の自分～トランスジェンダーモデルが語る、自分らしく生きる勇気と新たな挑戦～

これまでのキャリアについて教えてください。

現在30歳で、15歳から芸能の道に進みました。小さい頃から芸能界に憧れていて、高校生の時に良いタイミングでこの世界に入ることができたんです。モデル業から始まり、その後は歌って踊るアーティストとしてメジャーデビューし、グループで全国を回ったり、テレビに出演させていただいたり、本当にマルチに活動させていただきました。若いうちからそういった経験ができたことは、とても貴重な時間でしたね。

キャリアを転換されたきっかけは何だったのでしょうか？

心の中では変わらず、本心はずっとそうだったと思います。ただ、当時の時代の流れや社会の空気、見られ方がまだまだ厳しかったんです。活動する中でイメージや固定概念に縛られ、生きづらさを感じることも多く、葛藤が徐々に大きくなっていきました。そんな時にコロナ禍があり、グループも解散してソロになったタイミングで、本当に進みたい道、本当に表現したいことに向かって歩み始めたのが2〜3年前です。

変化されてから、良かったと感じることはありますか？

本当に目まぐるしく、毎日のように嬉しいことが起きています。一番大きかったのは、私を知っている友人や家族、お仕事関係の皆様が、『Daoちゃんらしく活動している姿を見て励まされている』と言ってくださることが増えたことです。直接お会いした時に涙を流してくださるくらい、熱い想いを伝えてくださる方もいらっしゃいます。

それまでとは違う繋がり方ができるようになったのですね。

以前は『こういうお仕事でこういうイメージで活動しているから憧れられている』という関係でしたが、今は心と心で人と繋がっていく瞬間が増えました。自分を表現することの素晴らしさに気づけましたし、私だけでなく、これから自分らしく生きていきたいと思っている方々の後押しになっていると感じられることが、何より嬉しいです。

SNSを通じてそういった反応も届くのでしょうか？

はい。『お母さんや親にカミングアウトできました』というメッセージや、前に進んでいく姿を報告してくださる方が本当に多くて。毎日、『この姿になって良かった』と実感しています。夢も果てしなく大きくなっていて、年齢に関係なくやりたいことがどんどん膨らんでいくんです。これは以前の活動の中ではなかった感覚なので、この選択は正解だったと思っています。

現在はどのような活動をされていますか？

モデルやインフルエンサーとしての活動に加えて、自分のアパレルブランドも立ち上げています。自分のやりたいことや得意なことを発信していくことを大切にしています。

アパレルブランドのコンセプトについて教えてください。

性別を問わない、ジェンダーフリーなブランドを展開しています。私の中でファッションは鎧のような感覚なんです。いろんな服を着ることで、その人のスタイルや表情、雰囲気が変わる。ファッションは本当に楽しくて、必要不可欠なものだと思っています。私のブランドを着ていただくことで、自分らしさや本来持っていない自信を引き出せるようなコンセプトにしています。ディテールや細かいデザインにもこだわって作らせていただいています。

アパレルへの興味は以前からあったのですか？

大好きでしたね。以前も自分のブランドを出させていただいていたのですが、SNSアカウントのトラブルで停滞してしまった時期があって。その時に、表に出ているだけでなく、裏で何が起きているかという部分も見えたことで、裏表を使い分けられる人になりたいと思いました。ファッションは自分の想いが入りやすく、『これを着たらみんな喜んでくれるかな』といろんな考え方ができるので、改めてファッションの素晴らしさを感じています。

インフルエンサーとしてはどのような案件が多いですか？

韓国系のファッションブランドとのタイアップや、実際に韓国に行って美容施術を紹介する動画制作などが多いです。ハイブランドからドメスティックブランドまで、様々なジャンルのブランドのパーティーにもお呼びいただいています。自分の世界観やSNSを作り上げる上でも、そういった場に顔を出すことを心がけています。来年はアーティスト業も再開予定で、現在準備を進めています。

変化されたことで叶ったことはありますか？

小さなことかもしれませんが、恋愛を自由にできるようになったことです。以前はありのままをさらけ出せなかった部分がありましたが、今は自由に発信できますし、ファンの方にも恋愛の話ができるようになりました。ありのままの自分を手に入れられたことが、本当に嬉しいですね。

恋愛をすると、人はいろんな活力が湧いてきて輝いて見えるじゃないですか。YouTuberさんたちがありのままの姿で親しみやすさを感じさせているように、今まで自分にはできなかったプライベートの部分も自由に表現できるようになったことで、より自分らしく生きられていると感じています。

女性らしさも変化しましたか？

とても変化しました。女性らしく生きていきたいという想いはずっとありましたが、葛藤もありました。でも今は、女性の持つ美しさやかっこよさへの憧れを、どんどん吸収できていると感じています。

今後挑戦したいことは何ですか？

トランスジェンダーモデルとしてテレビに出ていきたいという想いはもちろんありますが、日本だけでなく世界を視野に入れています。自分が持っている武器がどこまで通用するのか試したいという気持ちがあります。例えば、ミスインターナショナルクイーンという大会にも挑戦したいと考えています。

一度、自分が変化することで今までできていた仕事ができなくなったという経験をしました。でもそれを生かして、次は自分なりのエネルギーをどこまで発揮できるかチャレンジしたいんです。アーティストとしても、自分がやりたい曲や表現したい世界観を作り上げていきたいですし、憧れている海外のトランスジェンダーアーティストの方々とコラボできるレベルまで成長したいと思っています。

目指している姿はありますか？

特定の誰かを目指すというより、自分らしさを大切にしたいと考えています。以前、トランスジェンダーの方が雑誌の表紙を初めて飾ったというニュースを見たことがあって。ニュースになるくらい、社会に影響を与えられる存在になりたいという想いはあります。

プライベートはどのように過ごされていますか？

今までになかった経験として、パーティーやお酒の場に行くことが増えました。アーティスト時代はほとんどそういう場に行かなかったのですが、今は自分の知らなかった世界で出会う人たちとのエネルギーの交流がとても楽しくて。みんなが頑張っている姿や話を聞くだけで刺激になりますし、『一緒に仕事をしよう』とバイブスが合う瞬間を今すごく楽しんでいます。

オンオフがあまりなくて、常にオンのような状態ですね（笑）。でもそれが今の自分には合っているんだと思います。

恋愛については現在いかがですか？

自由に人を好きになれるようになってからは、より人の魅力に気づけるようになりました。人がもっと好きになったというか。恋愛もそこから発展することがあるのですが、私が好きになる方は自由な方が多くて、結局『お互いの自由でいるスタイルの方が楽しいよね』という結論になることが多いです。恋人という概念にとらわれなくてもいいのかなと思うようになりました。

海外では『付き合おう』という言葉がなく、自然と気づいたら付き合っているという空気感があると知って。日本に住んでいるから日本流のスタイルで生きなければと思っていましたが、違うんだなという気づきもありました。そういう出会いが増えたことで、視野が広がりましたね。

同じ悩みを持つ方々へメッセージをお願いします。

私自身も表現したくてもできない環境の中で、今の自分を手に入れることができました。それは、自分自身を本当に愛することが大切だったからだと思います。自分を愛することができないと、いくら変わりたいと思っても、自信がなくて進めなかったり、理想だけが先行して現実が追いつかなかったりします。

自分を愛している人には、愛してくれる人がたくさん集まってきます。理解してくれる人もどんどん増えていきます。もし変わっていきたい、前に進んでいきたいと思っているなら、まず鏡の前で自分のことを『大好き』と何度も何万回でも伝えてほしいです。それによって、進む力が変わってくると思います。

悩みは尽きないかもしれませんが、変わることで私のように自信を持って活動できるようになりますし、今まで見えなかった世界が見えてきます。人生ってこんなに楽しかったんだと気づける、第二の人生を歩めると思います。自分のことを愛しつつ、周りの意見に左右されず、たくさん前に進んでほしいと思います。

もし悩みがあれば、私にメッセージで相談してください。実際に相談してくださる方も増えていて、特に若い世代の方々が早めに自分の想いに気づいて、相談してくださることが多いです。自分が経験してきたからこそお伝えできることがあると思うので、力になれたら嬉しいです。