株式会社TIMELESS代表取締役/フォトグラファー 秋山優子さん
PROFILE
株式会社TIMELESS代表取締役、フォトグラファー。
日本大学芸術学部写真学科卒業後、広告写真家・テラウチマサト氏に師事。
高校時代から写真に親しむも、一度は写真の道から離れる。
再びカメラを手にしたことをきっかけに独立し、現在はTIMELESSフォトスタジオを運営。
写真を通して「その人らしさ」を引き出す表現を大切にしている。
遠回りから始まった再出発 ~“収入”ではなく“情熱”を選び直した彼女のキャリア論~
まず今のお仕事を教えてください。
株式会社タイムレスの代表取締役をしています。肩書きは代表ですが、いまも現場に立ってフォトグラファー/写真家としてお客様の撮影をしていて、それが一番のメインです。大学は日本大学芸術学部の写真学科を卒業しました。
今までのキャリアを教えてください。
大学卒業後すぐは、広告写真家の方の会社でアシスタントをしていました。師匠について学ぶような形ですね。ただ、卒業したタイミングがちょうど最初の緊急事態宣言の頃で、当時は学費も含めてお金に困っていたこともあり、生活のために夜の仕事をしていた時期がありました。結果的に、そのほうが稼げることに引っ張られてしまって、一時期はフォトグラファーの仕事から離れていました。
そこから2年ほど前に、4〜5年ぶりに一眼レフに触る機会があって。久しぶりに写真を撮った瞬間に、大学受験の頃の熱意みたいなものが一気に蘇ってきて『戻りたい』と思い、スタジオをオープンしました。
写真に戻る“決定打”になったのは、どんな感覚でしたか?
久々に心から『楽しい』って感じたんです。夜の仕事でも楽しい瞬間はあるけど、家に帰ると真顔というか、ぼーっとしてしまう生活だったんですよね。でも写真は、家に帰っても余韻が残るんです。『早くデータ見たい』って思える。あの感覚で“これだ、私がこの業界を好きになった理由は”って確信しました。毎日こんな気持ちで生きられたら幸せだろうなと思って、始めました。

写真の世界観は、どうやって磨いてきたのでしょう?
海外が大好きで、特に中国が好きなんです。中国語もネイティブくらい話せます。小さい頃から上海に頻繁に行っていて、向こうの“美の基準”や文化がすごく好きで。中国のSNS(小紅書/RED)を参考にして、現地のカメラマンがどうライティングしているかを研究したり、実際に中国に行ってスタジオを見に行ったり交流したりしています。大学時代は交換留学生として上海大学に行っていましたし、いまも年1〜2回は中国に行くことが多いです。だから『日本人が撮る世界観とちょっと違っていいね』と言われることは多いですね。
独立してスタジオを始めることに、不安はありましたか?
大きな出来事があって独立したというより、じわじわと限界がきた感覚でした。夜の仕事で毎月しっかり稼げるようになって、周りからは憧れられるような生活になっても、私自身の幸福度はそんなに高くなかったんです。“周りから見える自分”と“自分が感じていること”のギャップが広がっていって、それに耐えられなくなった。だから、写真に戻る決断をしました。
会社は最初から法人で始めたんですか?
はい。スタジオを始めるために法人を立ち上げたというより、もともと会社があったんです。母が経営者で、私も若い頃から不動産購入のために株式会社を持っていました。『せっかく会社があるし、この会社でスタジオをやっちゃおう』という感覚でしたね。
お母さまが経営者という影響は大きかった?
大きいと思います。若い頃から不動産など“大きなお金”に触れていたこともありますし、そもそも“雇われる側の発想”にあまり寄っていなかったんですよね。経営って最初はお金が入らないとか、赤字が続くとか、人件費が…みたいな話はよく聞きますが、私はそれを『まあそうだよね。だって私が代表だもん』と受け止められた。お金の不安より、人間関係の方が大変でした。
お金に対する価値観は、昔と今で変わりましたか?
変わりました。若い時はブランド物が欲しいとか、承認欲求も強くて、整形にお金をかけたり、映えスポットに行ったり、いろいろやっていました。でもある程度満たされた時に『あれ、全然楽しくないぞ』ってなってしまって。一切そこにお金を使わなくなったあたりから、幸福度はお金と必ずしも比例しないな、と感じるようになりました。
とはいえ、行動力や“稼ぐ力”も感じます。原動力は何ですか?
私は才能というより“量で勝負”タイプです。ひとつ決めたら寝ずに24時間全力、費用対効果を考えずにガンって動く。量をこなすと当たりが出てくるので、『来た来た』って波に乗っていく感じです。フォトグラファーとしても、撮るもの全部が光るタイプというより、コツコツ積み上げて“安定して一定以上のクオリティを出す”ことで信頼を作ってきた感覚があります。

撮影のときは、どんな提案をしているんですか?
必ずカウンセリングをします。会った瞬間の服装、顔立ち、髪型、髪色、その日のメイクを見て提案します。私は色を使った写真が好きなので、『赤似合いそうですね』とか、男性撮影の時は特に“女性目線でこうしてほしい”を提案します。バラを持ってもらったり(笑)。女子の夢を仕事で叶えてます。
男性の撮影が伸びているのは、なぜだと思いますか?
男性って、興味はあっても“どう撮ればいいか”“どこで撮れるか”を知らない人が多いんだと思います。あるプロデューサーの方をきっかけに、蝶々や花などの演出で撮った写真が反響を呼んで、『僕も撮りたい』という男性が一気に増えました。男性は自由に任せてくれる方が多いので、表現を一緒に作りやすいのも面白さですね。
今後、挑戦したいことはありますか?
はっきり決まっています。今はアパレルを始めたばかりで、今年はコスメも始めたいと思っています。最終的には“コスメ・アパレル・スタジオ(撮影)”の3つがすべてタイムレスの中で揃う形を目指しています。スタジオに来たら衣装が並んでいて、メイクもできて、そのまま撮影まで完結する。特に男性のお客様は“興味はあるけど何を選べばいいか分からない”という方が多いので、誰でも簡単に使えるコスメなども作っていきたいですね。三本柱があれば、どれか一つが少し不調でも別の事業で支えられる。経営者としても安心できる形を作っていきたいと思っています。

20・30代の女性へのアドバイスをお願いします。
私は遠回りもたくさんしましたし、一度好きなことから離れた時期もありました。でも振り返ると、“楽しい”って心から思えることを選び直した瞬間から、人生がちゃんと動き始めた気がしています。20代や30代って、周りと比べたり、収入や肩書き、SNSでの見え方を気にしてしまう時期だと思うんです。私自身もそうでした。でも、外からどう見えるかよりも、自分が毎日どんな気持ちで過ごしているかの方がずっと大事でした。
もし今、なんとなく満たされない感覚があるなら、それは“本当にやりたいこと”に気づくサインかもしれません。
すぐに大きな決断をしなくてもいいので、まずは『自分が楽しいと思える時間』を少しずつ増やしてみてほしいです。好きなことは、離れてもまた戻ってこれます。だから焦らず、自分の感覚を信じて選択していってほしいなと思います。


